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塩沼 賢

インタビュー時 スペインバルMon大門 シェフ
現 スペインバルMon-RICO田町 シェフ 塩沼賢
インタビュアー 日野雄一

日野)料理を始めたのはいつからですか?

塩沼)大学を卒業した後ですね。そのまま就職するのがつまらないなと。

日野)料理を勉強していたわけではないんだね。他にやりたいことがあったの?

塩沼)高校からずっと7年くらいドラムやってたんで。折しもインディーズバンドブーム。もう少し音楽の道を頑張ったらCDの一枚くらい出せるんじゃないかとメンバー集めてバンドやってました。
それと同時にフードコートで働き始めたのが飲食の仕事の始まり。そのフードコートで7年半くらい働きました。ファストフード、喫茶、おつまみ、なんでもありで、料理は作っていたけど料理人という意識はまったくなかった。それでも楽しいなと思いながら7年半、アルバイトでしたが副店長にもなった。そのうちにバンドやっているより料理作ってる時の方が楽しく思えてきた。

日野)その時は結婚してたの?

塩沼)いや、まだ。ちょうどその頃、お店が潰れて。友人が働いていた中野にある生パスタメインのイタリアンで手伝いから入った。そこの社長さんからいつまでもフラフラしてるんじゃないと檄を飛ばされました。で、初の正社員として就職。イタリアン入店と同時に音楽もやめて全部リセットして、そこで2年半ひたすらパスタを作り続けた。パスタまみれの二年半。
その間に結婚したり、第一子が生まれたり、店長を経験したり。

日野)パスタ屋さんがターニングポイントだった感じだ。

塩沼)料理人でもある社長と仕事ができたのはいい経験だったと思う。
そのうちにもっと料理を勉強したいなという欲が出てきて、次に就職した先がWhavesだった。

日野)Whavesを選んだ決め手ってなんだったの?

塩沼)月8日休み(笑)。いや、大事ですよね。家庭もあったし、長い将来を見据えて就職先を探していたっていうのもある。パスタだけでなく、いろいろな料理を作ってみたかった。その業態の幅も魅力の一つでした。それが33歳のとき。

日野)今6年目だよね。振り返ってどんな6年でした?

塩沼)面接してくれたのが河南さん(当時Whaves総料理長)で、情熱というか熱い思いを感じて。料理に対してはもちろんだけど、仲間や家族を大切にするとか、そういう部分にもすごく共感した。
入社したての時は経験値も少なかったので昼間は中華の大天門で皿洗い、夜はスペインバルRICOで料理を作ってました。

日野)修行という感じかな。自分から見ていると、入社してから着々とステップアップしているように感じていたけど。最初は大変だった?

塩沼)すげーな、やべーなって。Whavesの料理人は、自分からしたらみんな神みたいな人たちに思えた。

日野)そんな中、2年弱でシェフに就任。複数店舗のシェフを経験し、現在はバル1号店であるMonのシェフ。店長とシェフを兼任した時期もありますね。

塩沼)気がつけばいろいろやらせてもらいました。

日野)調理師学校出身者やいろいろな店舗で経験を積んだ料理人が多い中、ある意味特異な経歴からのスタートだったと思うんだけど、短期間ですごい躍進を遂げたよね。
「料理」に対して念頭に置いていること、こだわりというのはどんなところにありますか?

塩沼)こだわりっていうか。いつも思うのが、丁寧な作り方をすれば美味しいものができるというのが根本にあって、逆に言えばどんなにいい素材でも雑に扱ったらそこそこの味になってしまう。
お客様に料理を届ける場面をいつも想像して、そこから逆算して自分の仕事を組み立てていくように意識しています。

日野)飲食という「仕事」に対する姿勢を教えてください。

塩沼)とにかく楽しくってことですかね。楽しくないと意味がない。自分も仲間もその周りも。そしてお客様も。
うちの会社のいいところって、キッチンとホールの垣根があまりないところだと思う。仲がいい。でも甘えや妥協の仲良しではなくて、やりきった先にある達成感を知っているからこそ、大変なことを楽しめるんだと思う。そういう意味での楽しみを常に味わいたいですよね。

日野)そういうプラスの空気はお客様にも伝わるからね。
賢さんはお子さんも2人いて家庭も充実していると思いますが、実際仕事とプライベートのバランスはどんな風にとってますか?家族サービスとかする?

塩沼)うちの奥さんとは前々職で知り合ったので、飲食の勤務時間とか忙しさとかに理解がある人。
平日は自分も仕事に出てしまうし奥さんも専業主婦業で忙しいのでなかなか時間は作れないですけど、休日は一緒に出かけたりして家族と過ごします。でも、どうしても疲れている日なんかは割り切って寝る。体大事ですからね。
あとは休みの日は大体、自分で買い物に行って夕飯を作ってるかな。

日野)家族喜ぶでしょ?

塩沼)うーん。そうですね・・・。でもそれが当たり前だからなぁ。家族サービスとは思ってないっていうか。奥さんと一緒に、時には子供も一緒に料理を作ってるから、コミュニケーションはとれますね。

日野)偉いなぁ。奥さんとの時間と、子供との時間と、って分けて取ることってできてますか?

塩沼)子供がいるとどうしても奥さんとの時間って短くなってしまいますよね。仕事が終わって帰ると大体起きてくれているので、顔を合わせて話をするその時間は大事だと思います。
自分の親父が休みの日はいつも遊んでくれる人だったので、自分も休みの日は子供とたくさん遊んでいろんなところに連れて行きますね。子供だった頃、やっぱり親父と遊んだことが楽しかったし、自分の持つ家庭像も両親の影響が強いかもしれない。

日野)一緒にご飯を作ったり出かけたりって、子供にとっては貴重な思い出になるんだろうね。
営業企画部でも「食育」の大事さがよく話題に出て、会社で取り組みもしていきたいんだけど、授業という形ではなく、自然に生活の一部として学ぶことができるのがベストだなと思う。賢さんの家庭ではそういう自然と「経験して学ぶ」というスタンスができているように感じるな。

塩沼)食に関わらず、自分の両親や兄弟の家族とキャンプをしたり、お誕生日会をしたり、自分たちだけでなく、関わる人全員で子育てしている感じ。そういうのも子供にとっていい経験になってくれるといいなと思っています。

日野)Whavesでめきめき頭角を現してシェフに登りつめましたが、今後どんな仕事をしていきたいと思いますか?

塩沼)料理を始めて日が浅いと思うし経験も足りないと思っていて。まだやっていないことがたくさんあると思う。もっともっと勉強が必要だなと思います。
しばらくはいろんな食材を扱って勉強することを地道にやっていきたい。
生産者さんとのつながりもすごく刺激になります。ゆくゆくは自分たちで扱う食材を作ったりもしてみたいですね。いろんな可能性があるし、Whavesだったら実現できそうな気がしますよ。

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